和食の定番であり、家庭料理の代表格でもある「筑前煮」。今回は、日本料理の伝統を受け継ぐ田村隆さんのレシピをご紹介します。
根菜と鶏肉の旨味がぎゅっと詰まった筑前煮は、どこかほっとする味わいが魅力ですが、ご家庭で作ると「野菜が煮崩れてしまう」「鶏肉がパサパサになってしまう」「色が黒っぽく仕上がってしまう」といったお悩みを抱える方も多いのではないでしょうか。
田村隆さん直伝のこのレシピでは、そうした失敗を防ぎ、それぞれの具材の持ち味を最大限に引き出すためのプロの技がふんだんに盛り込まれています。食材ごとに火を入れるタイミングを変えたり、調味料を数回に分けて加えることで、見た目も美しく、味わい深い一品に仕上がります。
特別な調味料は使わず、干ししいたけ、れんこん、ごぼう、にんじんといった身近な食材と基本的な調味料だけで、まるでお店でいただくような本格的な筑前煮を作ることができます。
毎日の食卓はもちろん、おもてなしの席や特別なお祝いの日の献立にもぴったりですので、ぜひこのレシピに挑戦して、ワンランク上の和食をご自宅で楽しんでみてください。
【田村隆さんのレシピ】筑前煮の作り方
Course: 主菜Cuisine: 和食4
servings30
minutes20
minutes320
kcal50
minutes和食の定番であり、家庭料理の代表格でもある「筑前煮」。今回は、日本料理の伝統を受け継ぐ田村隆さんのレシピをご紹介します。
材料
干ししいたけ(小) 12枚
れんこん 150g
ゆでたけのこ 150g
ごぼう 100g
こんにゃく 1枚
にんじん 150g
鶏もも肉 1枚(300g)
スナップえんどう 100g
昆布の水だし カップ3(昆布5cmを水カップ3に30分間浸したもの。)
針しょうが 適宜
塩
ごま油 大さじ2(あれば白)
砂糖 大さじ5
しょうゆ
作り方
- 干ししいたけはたっぷりの水で戻し、軸を切る。れんこんは皮をむき、大きめの乱切りにしてサッと水に通す。ゆでたけのこは乱切りにする。ごぼうは皮をこそげ取り、斜めに回し切りする。こんにゃくはスプーンで一口大にちぎる。
- にんじんは皮をむき、乱切りにする。鶏もも肉は筋を断つようにして大きめの一口大に切る。
- スナップえんどうは筋を取り、塩ゆでして長さを半分に切る。
- 大きめの片手鍋にごま油大さじ2を熱し、まず鶏もも肉、にんじんをいためる。肉の表面が白くなったら、にんじんと一緒に取り出す。
- ポイント
- ≪プロのコツ 1 ≫ 具材の個性を考えて時間差をつけて煮る。煮続けるとくずれるにんじん、堅くなる鶏肉は先にいためて取り出す。鶏肉のうまみが出た汁にだしとほかの野菜類を加えて煮て、味をつける前に戻し入れる。この時間差が、個々の具材の持ち味を生かすコツ。
- 同じ鍋に 1 の野菜とこんにゃくを入れてざっといため、昆布の水だしを加えて中火にかける。
- ポイント
- 水だしの昆布から出たヨード分にアクが付着して、すくいやすくなる。
- 4 のにんじんと鶏肉を戻し入れ、砂糖大さじ5、しょうゆ大さじ3を加える。アクを取って落としぶたをし、そのまま中火で5分間煮る。火を止めて、しばらく冷ます。
- ポイント
- ≪プロのコツ 2 ≫ 味付け8割、最後に決める。しょうゆは2度に分けて加える。最初から全量を入れると色が黒くなり、香りもとぶ。控えめに味付けして煮、火を止める前にもう一度加える。
- 再度火にかけ、沸騰する直前で火を止め、しばらく冷ます。
- もう一度火にかけ、しょうゆ大さじ1を回し入れる。 3 を加え、鍋を揺すって材料を返しながら、汁けがとぶまでいり煮にする。
- ポイント
- ≪プロのコツ 3 ≫ 仕上げの鍋返しで具を輝かせる。煮汁の中で具材が泳いでいるようでは筑前煮にあらず。最後の煮汁をとばして照り出し、つやよく仕上げる。
- 彩りよく器に盛り、針しょうがを天盛りにする。
メモ
- 田村隆さんのレシピ (筑前煮)
筑前煮を美味しく作る3つの極意
具材の個性を生かすための時間差加熱
このレシピの最大のポイントは、具材ごとに火を入れるタイミングを変えることです。最初に鶏肉とにんじんをごま油で炒めますが、鶏肉の表面が白くなった段階で一度取り出します。これをずっと煮続けてしまうと、にんじんは形が崩れ、鶏肉は水分が抜けてパサパサと硬くなってしまいます。
鶏肉の旨味が溶け出した油と汁に昆布のだしを加え、他の野菜を煮ていくことで、それぞれの食材が最適な柔らかさに仕上がります。味をつける前に先ほどの鶏肉とにんじんを戻し入れるというこの時間差の工夫が、個々の具材の食感と持ち味を最大限に生かす極意なのです。
醤油を2回に分けて加える味付けの黄金比
煮物の味付けにおいて、調味料を入れるタイミングは非常に重要です。このレシピでは「味付けは8割で止め、最後に決める」という手法をとります。具体的には、砂糖大さじ5と醤油大さじ3を加えて5分間煮た後、一度火を止めて冷まし、最後に仕上げとして醤油大さじ1を加えます。
最初から全量の醤油を入れて煮込んでしまうと、仕上がりの色が黒く濃くなりすぎてしまい、醤油の豊かな香りも飛んでしまいます。控えめに味付けをしてじっくりと味を含ませ、最後に醤油を回し入れることで、美しい色合いと芳醇な香りを両立させた上品な筑前煮が完成します。
仕上げの「鍋返し」で照りとつやを生み出す
筑前煮の美味しさは、味だけでなく見た目の美しさにもあります。煮汁がたっぷりと残って具材が泳いでいるような状態は、理想的な筑前煮とは言えません。最後に残りの醤油大さじ1を加えた後、スナップえんどうを加え、鍋を揺すって材料を上下に返しながら、汁気が完全に飛ぶまで「いり煮」にします。
この仕上げの鍋返しを行うことで、具材一つ一つに煮汁がしっかりと絡みつき、表面に美しい照りとつやが出ます。このひと手間を加えるだけで、まるでお店のような輝く艶やかな仕上がりになり、目でも楽しめる一皿になります。
最高のペアリング:料理を引き立てる飲み物
田村隆さんの筑前煮は、根菜の豊かな風味と鶏肉の深い旨味、そしてごま油の香ばしさが特徴のしっかりとした味わいです。この和食の王道とも言えるお料理には、あえてワインを合わせることで、新しい食の体験を楽しむことができます。おすすめは、日本の固有品種である甲州ぶどうを使用した白ワインです。
例えば「シャトー・メルシャン 甲州きいろ香」のような、柑橘系の爽やかな香りとすっきりとした酸味を持つワインは、筑前煮の甘辛い醤油味を優しく包み込み、昆布だしの旨味と見事に調和します。また、少しふくよかな果実味を楽しみたい場合は、樽熟成させたシャルドネもよく合います。
樽の香ばしい風味が、ごま油で炒めたごぼうやれんこんの土のニュアンスとリンクし、味わいに深みをもたらします。さらに、軽快な赤ワインを選ぶなら、ピノ・ノワールが適しています。鶏肉のコクと醤油の風味に、ピノ・ノワール特有の赤いベリー系の果実味と繊細なタンニンが寄り添い、贅沢なマリアージュを奏でてくれます。
保存テクニックと温め直し方
筑前煮は、作ってすぐよりも、一度冷まして味を含ませた方が格段に美味しくなるため、作り置きにも非常に適したお料理です。保存する場合は、粗熱がすっかり取れてから清潔な保存容器に移し、冷蔵庫で保管してください。冷蔵保存で約3〜4日程度美味しくお召し上がりいただけます。
温め直す際は、電子レンジを使うか、小鍋に移して弱火で焦げないようにじっくりと加熱してください。また、こんにゃくとたけのこは冷凍すると食感が変わって筋っぽくなってしまうため、冷凍保存はおすすめしません。
どうしても冷凍したい場合は、こんにゃくとたけのこを取り除いてから冷凍庫に入れ、約2週間を目安に食べ切るようにしてください。
このレシピのまとめと栄養のポイント
日本料理のプロフェッショナルである田村隆さんの筑前煮レシピをご紹介しました。このレシピの素晴らしさは、特別な食材を使わなくても、調理のちょっとしたタイミングや順序を工夫するだけで、家庭の味が劇的に美味しくなる点にあります。
具材ごとに火の通りを計算して時間差で加熱すること、醤油を2回に分けて香りと色合いを保つこと、そして最後に鍋返しを行って汁気を飛ばし、美しい照りを出すこと。これらの一つ一つの工程が、野菜の歯ごたえ、鶏肉のジューシーさ、そして全体の奥深い旨味を作り出しています。
干ししいたけの戻し汁ではなく昆布の水だしを使い、すっきりと上品に仕上げているのも特徴です。毎日の献立の心強い味方として、また、お正月のおせち料理やお祝い事の席など、ハレの日の食卓を彩る一品としても大活躍間違いなしの逸品です。
ぜひこのプロのコツをマスターして、ご家庭で極上の筑前煮を味わってみてください。
