田村隆さんの本格的な「煮しめ」のレシピをご紹介します。日本の伝統的な家庭料理であり、お正月やお祝い事の席には欠かせない煮しめですが、それぞれの食材が持つ本来の色合いや風味を存分に生かすためには、丁寧な下ごしらえと調理法が求められます。
このレシピでは、根菜類、乾物、こんにゃくなどの多種多様な具材を「グループA」「グループB」「グループC」という3つの鍋(またはフライパン)に分けて別々に煮含めていくのが最大の特徴です。
にんじんは美しい「ねじり梅」に飾り切りにし、里芋は六角形にむいて面取りを行うなど、細部にまで気を配ることで、お重や器に盛り付けた際の仕上がりが格段に美しくなります。また、一度に長時間煮続けるのではなく、短時間煮ては冷ますという工程を繰り返すことで、煮汁の旨味が食材の芯までしっかりと浸透します。
時間はかかりますが、その分だけ極上の味わいが楽しめる、まさにプロフェッショナルな一品です。ご自宅で本格的な和食の味を再現したい方に、ぜひ挑戦していただきたい特別なレシピとなっています。
【田村隆さんのレシピ】煮しめの作り方
Course: 副菜Cuisine: 和食4
servings1
hour40
minutes380
kcal100
minutes田村隆さんの本格的な「煮しめ」のレシピをご紹介します。日本の伝統的な家庭料理であり、お正月やお祝い事の席には欠かせない煮しめですが、それぞれの食材が持つ本来の色合いや風味を存分に生かすためには、丁寧な下ごしらえと調理法が求められます。
材料
絹さや 15枚
酢
砂糖
サラダ油
みりん
しょうゆ
塩
【グループA】
高野豆腐 2枚
れんこん 2節(300g)
にんじん 1本
【A】
だし カップ3
砂糖 大さじ5
うす口しょうゆ 大さじ2
【グループB】
干ししいたけ(小) 10枚(35g)
ごぼう 1本(150~200g)
こんにゃく 1枚
米のとぎ汁 適量
【B】
だし カップ3
砂糖 大さじ4
しょうゆ 大さじ2
【グループC】
里芋 10コ
【C】
だし カップ3
砂糖 大さじ3
うす口しょうゆ 大さじ2
作り方
- たっぷりのぬるま湯に一晩つけて戻す。
- 手ではさんで絞り、新しい水につける。
- 2 を2~3回くり返し、出てくる水が濁らなくなったら、しっかりと水けを絞って、1枚を6等分の正方形に切る。
- ピーラーで皮をむき、たっぷりかぶるくらいの水と酢大さじ1を加えてゆでる。
- 透き通ってきたら冷水にとって冷まし、1cm幅に切る。
- ポイント
- ゆでてから切ると、割れたり欠けたりせず、きれいな断面に。
- 4~5cm長さに切り、さらに放射状に3等分に切る。それぞれ中心の角を縦に少しそいで切り落とす。
- ポイント
- このように切ってから型で抜けば、味のよい外側の部分がむだにならない。細長い先端は乱切りに。
- 断面を下にして置き、梅の抜き型で抜く。
- ポイント
- 「ねじり梅」にする場合。花びらの境目から中心に向かって切り目を入れる。その切り目から隣の切り目に向かって包丁の刃を斜めにねかせるように入れて薄くそぎ取ると、立体的な花の形になる。
- 砂糖1つまみを加えた水につけ、浮かないようにラップで落としぶたをし、一晩おいて戻す。軸を切って除く。
- たわしで洗って太めの斜め切りにし、たっぷりの米のとぎ汁でゆでる。柔らかくなったらざるに上げてサッと洗う。
- 両面とも、厚みの1/4まで斜めに細かく切り目を入れる。
- サラダ油小さじ1を中火で熱したフライパンで、両面に焼き目をつける。
- 熱湯でサッとゆでて水けをきり、高野豆腐と大きさ、厚さを合わせて正方形に切る。
- ポイント
- 高野豆腐は煮ると少しふくらむので、こんにゃくのほうをやや大きく切るとよい。
- 重箱の高さに合わせて上下を平らに切り落とす。
- 縦に皮をむく。下から上へ、まっすぐにむき上げ、上下の断面が六角形になるようにする。
- ポイント
- 皮の縁より少し外側まで包丁の刃を入れてむいていくと、皮のむき残しがない。
- 鍋に入れて、たっぷりかぶるくらいの水と酢大さじ1を加え、弱めの中火でゆでる。柔らかくなったら湯をきり、水で洗ってぬめりを取る。
- ざるに上げて水けを拭き取り、重箱や器に隙間なく並べられるように、里芋の側面の丸みを平らに切り落とす。
- ポイント
- 切り落とした部分は捨てずに、みそ汁の実などに利用するとむだがない。
- 【グループA】、【グループB】、【グループC】は、それぞれフライパンか鍋に入れ、煮汁の材料【A】、【B】、【C】を加えて中火にかける。
- 煮立ったら弱めの中火にし、アルミ箔(はく)で落としぶたをして3~4分間煮る。
- 火から下ろし、落としぶたを外して冷ます。こうして煮ては冷ます、を3~4回くり返し、味をしっかり含ませる。
- ポイント
- 煮物は冷ます間に味がしみるので、この手間は省かない。
- 最後に落としぶたを取って強めの中火にかける。【A】はみりん大さじ1、【B】はしょうゆ大さじ1/2、【C】はみりん大さじ1/2を加え、鍋を揺すりながら煮汁をとばす。
- 汁けがからんでつやが出たら、バットに移して冷ます。
- 絹さやはヘタと筋を除き、塩少々を加えた熱湯でサッとゆでる。盆ざるに広げて湯をきり、塩少々をふって手早く冷ます。
- ポイント
- 冷水にとると水っぽくなるので、うちわであおいで手早く冷まし、色鮮やかに。
- 21 が冷めたら、 22 を添えて盛り付ける。
メモ
- 田村隆さんのレシピ (煮しめ)
煮しめを美味しく作る3つの極意
煮ては冷ますをくり返し、味を芯まで含ませる
このレシピにおいて最も重要なポイントの一つが、具材を煮汁で煮る際の温度管理です。レシピの手順にある通り、煮立ったら弱めの中火にしてアルミ箔で落としぶたをし、3〜4分間煮た後に火から下ろして冷ますという作業を3〜4回繰り返します。
煮物は加熱している時ではなく、温度が下がって冷めていく過程で最も食材に味が染み込むという科学的な特性があります。
ずっと火にかけたままだと食材の表面ばかりが濃くなり、煮崩れの原因にもなりますが、この「煮ては冷ます」というひと手間を惜しまずに行うことで、形を綺麗に保ったまま、中心部まで均一に奥深い出汁と調味料の旨味を含ませることができます。
こんにゃくは高野豆腐よりもやや大きく切る
重箱や器に盛り付ける際、それぞれの具材の大きさが揃っていると見た目の美しさが際立ちます。高野豆腐とこんにゃくを正方形に切り揃える工程がありますが、ここで意識すべきなのが加熱による食材の体積変化です。
乾物である高野豆腐は、たっぷりの煮汁を含んで煮上がることで元のサイズよりも少しふくらむ性質を持っています。一方で、こんにゃくは加熱してもほとんど大きさが変わりません。
そのため、仕上がりのタイミングで両者が全く同じ大きさ・厚さになるように計算し、切る段階ではこんにゃくのほうをやや大きめにカットしておくのがポイントです。これにより、最終的な盛り付けに美しい統一感が生まれます。
絹さやは水にとらず、うちわであおいで手早く冷ます
煮しめの彩りとして欠かせない緑色の絹さやですが、美しい色を保つためには茹で上がった直後の冷却方法が鍵となります。通常、青菜などを色鮮やかに仕上げる際は冷水に取ることが多いですが、絹さやの場合は冷水に浸してしまうと水っぽくなり、せっかくの食感や風味が損なわれてしまいます。
レシピにある通り、塩少々を加えた熱湯でサッと茹でた後は、盆ざるに広げて湯を切り、塩少々を振ってから「うちわであおいで」手早く冷ますのが正解です。風を当てて一気に粗熱を取ることで、余分な水分を含ませることなく、鮮やかな緑色とシャキッとした心地よい歯ごたえを両立させることができます。
最高のペアリング:料理を引き立てる飲み物
煮しめの繊細な出汁の旨味と根菜の甘みには、やはり日本酒や優しい味わいのワインがよく合います。特におすすめなのは、香りが穏やかで米の旨味がしっかりと感じられる純米酒です。冷や(常温)または少し温めたぬる燗にすることで、醤油とみりんの甘辛い風味と見事に調和します。
ワインを合わせる場合は、樽香の強すぎないスッキリとした白ワイン、例えばシャブリなどのシャルドネや、日本の甲州ワインがぴったりです。出汁の風味を邪魔することなく、絹さやの青々しい香りやレンコンのシャキッとした食感を優しく包み込み、食中酒としてお互いの美味しさを引き立ててくれます。
さらに、高野豆腐や干ししいたけといった乾物から染み出る凝縮された深い旨みは、熟成感のあるお酒とも相性が抜群です。和洋問わず、寄り添うような味わいのお酒を選ぶのがポイントです。
保存テクニックと温め直し方
煮しめは、しっかりと味が染み込んでいるため、作り置きとしても非常に優秀な料理です。粗熱が完全に取れたら、清潔な密閉容器に移し替えて冷蔵庫で保存してください。冷蔵保存で約3〜4日程度美味しくお召し上がりいただけます。
保存中も徐々に味が馴染んでいくため、翌日以降はさらに深みのある味わいを楽しめるのが魅力です。ただし、彩り用の絹さやは一緒に長時間保存すると色が黒ずんでしまうため、別の容器に分けて保存し、食べる直前に添えるのがおすすめです。
お召し上がりの際は、冷たいままでも美味しいですが、電子レンジで軽く温め直すと、出汁の香りがふわりと立ってより一層美味しくいただけます。
このレシピのまとめと栄養のポイント
田村隆さんのレシピによる本格的な「煮しめ」は、食材それぞれの持ち味を最大限に引き出すための知恵が詰まった素晴らしい一品です。干ししいたけや高野豆腐を一晩かけて丁寧に戻し、里芋を六角形にむき、にんじんを立体的な「ねじり梅」に仕立てるなど、一つ一つの工程に日本の美意識が感じられます。
さらに、風味やアクの強さが異なる具材を「グループA」「グループB」「グループC」の3つに分け、それぞれに適した味付けの煮汁で別々に煮ることで、味が混ざらず透明感のある美しい仕上がりを実現しています。そして、3〜4回繰り返される「煮ては冷ます」という工程により、奥深い出汁の旨味が芯まで行き渡ります。
最後にみりんや醤油を加えて煮汁を飛ばし、ツヤよく仕上げた具材は、まるでお正月のお重を彩る宝石のようです。手間と時間をかける価値が十分にある、最高峰の和食レシピです。
